車椅子使用時の前ずれを解消させる方法

ふくし
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員14年目のふくしです。
役に立つ介護用品や便利な機能が色々あるのに、介護の現場では知らない人が多いと実感。少しでも介護者の負担やストレスを減らせるよう効果的な機能の活用方法や色々な介護用品を紹介していきたいと思っています。
堤さん    (利用者)

車椅子に座っていると段々とお尻が前に滑ってくる。

高橋さん    (介護者)

すぐにお尻が前に滑ってきて姿勢が崩れてしまうので、安定した姿勢を保持できるようにしたい。

車椅子を利用される方でお尻が前に滑ってくる方は多いです。

このお尻が前に滑ってくることを「前ずれ」と言います。

車椅子の座面は基本的に前側と後ろ側では高さが違い、前側が2~3cm高くなっています。

座面が後ろに傾いているということですが、それでも前ずれは起きやすいです。

目次

前ずれしてしまう原因はいくつかあります。

原因① 車椅子の座面の奥行が長すぎる

奥行が長すぎる座面に深く座ると、座面の前端がふくらはぎや膝裏に当たってしまうので、それを避ける為にお尻を前に滑らせてしまいます。

対策

座面の奥行が短い車椅子に変更する。

原因② フットサポートの高さが合っていない

フットサポートが高すぎると膝が上がり上体が後方へ倒れやすくなり仙骨座りが起きやすくなります。また、フットサポートが低すぎると足を届かせようとお尻を前に滑らせてしまいます。

対策

座面と太ももの間を開け過ぎず、密着しすぎない程度にフットサポートの高さを調整する。

原因③ 背もたれの形状と円背の不適合

円背の方は背中が丸まることで、バランスを取るために骨盤が後傾していることがほとんどです。

円背の方は深く座っても骨盤の後ろに隙間ができてしまい、その隙間に向かってさらに上肢が下がろうとする力が生じ前ずれしやすくなります。

対策

背もたれの張り具合を調整できるタイプの車椅子に変更し、背もたれの張りを緩めに調整する。

原因④ 膝の拘縮とフットサポートの位置(前後)の不適合

拘縮で膝が伸ばしにくい方がフットサポートに足を乗せようとすると、なかなか伸びない膝を伸ばす必要があります。

しかし、膝を伸ばすことが苦痛になり、その苦痛から逃れる(膝を伸ばさなくていいようにする)為にお尻を前に滑らせるようになります。

対策

フットサポートが座面の前端よりあまり前に出ていないタイプの車椅子に変更する。または、フットサポートの前後位置を替えられる機種に変更する。

原因⑤ 股関節が曲がりにくい

股関節が90度まで曲がらないと、座面の奥までしっかりとお尻を引くことはできません。

できるだけ頑張って座面の奥まで座っても、股関節を伸ばし楽な姿勢になろうとすることで、お尻を前に滑らせてしまいます。

対策

リクライニング機能付きの車椅子に変更して、股関節が楽になる角度まで背もたれを倒す。

原因⑥ 座位保持力と背もたれの高さの不適合

車椅子は基本的に背もたれの高さが肩甲骨の下あたりまでになっています。これは自走する時や腕を動かす時に肩甲骨の動きを邪魔しないようにする為です。

しかし、座位保持力が低い方は、肩甲骨まで背もたれがないと体幹が不安定になる為、低い背もたれに背中を押し付けたり、肘掛けにしがみつくようにして安定を得ようとする傾向があります。そうなるとお尻が前に滑ってきます。

対策

背もたれが高めの車椅子に変更する。

車椅子を調整したり替えることができるのであれば、それぞれ原因に合った対応をするとそれだけで改善されることがあります。

しかし、それでもまだ前ずれが顕著に見られる時には次項の方法を検討してみてください。

①車椅子用クッションを使う

車椅子用のクッションは種類が豊富です。

前ずれを抑えられるように作られたものもあるので、それを使うと前ずれを軽減させることができます。

タイプとしては2種類あり、クッションの前側と後ろ側で高さが違っているタイプと全体的にお尻を包み込むような形状になっているタイプがあります。

クッションの前側と後ろ側の高さが違うというのは、前側が高く後ろ側が低くなっていて真ん中辺りに段差があるクッションのこと。

出典:株式会社 加地(アウルサポートシートクッション)
https://exgel.jp/jpn/

段差を作ることでお尻が滑っていくのを防ぎます。

ふくし

前ずれを抑えたいとなった時には、まずこのタイプを試すことが多いです。

全体的にお尻を包み込むような形状というのは、下の写真のようにクッションがお尻の形に合うように彫れている(立体的になっている)クッションのこと。

出典:株式会社 加地(アウルケア80C)
https://exgel.jp/jpn/

前後の高低差だけでなく左右にも高低差がついているので、お尻のホールド感は高めです。

②チルト機能付きの車椅子に替える

チルト機能とは座面と背もたれで作られている角度を変えないまま後ろに傾ける機能のこと。(下図参照)

チルト機能を使えばお尻は前に滑ることが無くなります。

ちなみに、チルト機能付きの車椅子が普通の車椅子と(チルト機能以外で)違う点は大きく2つ。

ひとつ目は、ヘッドサポートが付くということ。

これは、チルト機能を使うと体が後ろに傾くので、頭を支える為。

ふたつ目は、転倒防止キャスターが付くということ。

これは、チルト機能を使うと車椅子の重心が後ろに移動するので、車椅子がひっくり返らないようにする為。

この2つの違う点によって今まで出来ていたことが出来なくなることがあるので、それを解説します。

チルト機能付き車椅子に替える際の注意点

普通の車椅子でやっていたことが、チルト機能付きの車椅子に替えることでやりにくくなることがあります。それは以下の2つ。

ひとつ目は、車椅子の後ろから利用者の脇に手を入れて体を持ち上げるようにして、座面の奥まで座り直しをしている時。

チルト機能付きになるとヘッドサポートがあるので、そのやり方で座り直しをしていた場合、ヘッドサポートが邪魔で行いにくくなります。

ふくし

介助時だけヘッドサポートを取り外すというやり方もありますが、介助用ハンドルの位置も高くなっている為、やりにくさはあります。

ふたつ目は、車椅子の前輪を高く上げて段差を上がったりスロープを昇る時。

転倒防止キャスターが付いているので、前輪を上げるとそのキャスターがすぐにつっかえて高く上げることができません。上げられたとしても数cm程度。

ふくし

段差を上がる時だけ転倒防止キャスターを外すというやり方もあります。面倒でなければ、この問題は解消します。

チルト機能付きの車椅子に替える際は、以上のようなことも考えて検討してください。

③滑り止めシートを使う

前ずれを防止する為の車椅子用滑り止めシートがあります。

その商品がこちら⤵

車椅子用ゼオシーターは座面に敷くだけで簡単に前ずれを防止することができます。

このシートの一番の特徴はグリップ力。

薄くて軽いけどとにかくグリップ力が強い。

グリップ力が強いので、お尻に皮膚トラブルを抱えている方は皮膚に負荷が掛かる可能性があるので、そういう方にはお勧めできません。

この商品を施設のイベントにもっていったら、来場者の方々に結構興味を持っていただいて、5名程購入されました。

ふくし

私もデスクワーク時はお尻が前に滑ってきやすいので、実際に職場のデスクで使っています。

④車椅子の座シートの下に段差を作る(すぐに対策したい時)

この方法は、写真のように車椅子の座シートが取り外せるタイプだけ行うことができます。

やり方は簡単で、座シートをめくったらそこにタオルなどを丸めたものを置いて座シートを元に戻すだけ。

丸めたタオルは座面の前側から真ん中辺りまで入れることがポイント。

なぜかと言うと、下図のように前側に少しだけ入れただけでは、お尻が前に動くスペースが残ってしまうからです。

今すぐなんとかしたい時やできるだけお金をかけたくない時に有効です。

車椅子使用時の前ずれは結構多いです。

それを解消させる方法はいくつかあるので、前ずれが気になってきたら今記事を参考にしてみてください。

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