床ずれの原因はひとつだけでなく、いくつかあることをご存じでしょうか?
床ずれができた原因が何なのか?
その原因に適した対策を取っていかないと、なかなか床ずれが治らないということにもなります。
この記事では、床ずれが発生する原因と対策について解説したいと思います。
床ずれができる原因
圧迫
長時間同じ姿勢でいると毛細血管を圧迫し続けることになり、血流が途絶えてしまいます。
血流が途絶えると細胞は血液から栄養をもらうことができません。
栄養が届かなくなった細胞は死んでしまい、床ずれができてしまうということです。

ずれ・摩擦
ずれ・摩擦とは、
- 電動ベッドで背上げをした時にお尻あたりに発生するずれ
- 起き上がりからベッドに腰かけるまでの介助の際に、お尻を中心に回転させるような動きの際に発生するずれ
などがあります。
ずれ・摩擦が生じるということは、それだけ皮膚に負担が掛かるということで、床ずれの原因になります。
皮膚湿潤
皮膚湿潤は文字通り、皮膚が湿っている状態のことで、それが長時間続くことで皮膚が弱くなってしまうことです。
- おむつで排泄をしたまま長時間放置している
- 汗をかいても拭かずに過ごしている
などの状態が続くと皮膚が弱くなり床ずれができやすくなっていします。
栄養不足
栄養不足は文字通り、栄養が足りない状態のことです。
意外と知られていないかもしれませんが、栄養が足りないことも床ずれができる大きな原因のひとつになります。
特に高齢者は味覚の低下や食べ物をうまく飲み込めないなどの原因によって食事量が減り、栄養不足になりやすくなります。
原因別の床ずれ対策
【圧迫】が原因の床ずれ対策
圧迫が原因の床ずれは傷が丸くなっていることが特徴です。
この場合、圧迫が強いことが原因なので圧迫を弱めてあげることが大切です。
圧迫を弱める方法としては以下のような方法があります。
体圧分散マットレス(床ずれ予防マットレスやエアマット)を使う
体圧分散マットレスとは、マットレスの上に寝た時に特定の部位に圧が集中するのを防ぐマットレスのことです。
ウレタンや天然ゴムなどの素材でできているものや空気で膨らますエアマット、またウレタンとエアマットを組み合わせたハイブリッドタイプなどがあり、ウレタンを使用しているタイプには、内素材にスリットが入っていたり、流動性のあるゲルが入っていたりします。
「標準的なマットレスから体圧分散マットレスに入れ替える」これだけで寝ている時にかかる圧を軽減させることができるので、床ずれ予防・回復にかかる介助の手間も少なく済みます。
体位変換を行う
体位変換とは、自分自身で体を動かしたり寝返りができない方に対し、介助者が定期的に体位を整えることをいいます。
体を自分で動かすことが難しい方(寝たきり状態など)は、定期的に寝る向きを横(左右)に向ける必要があります。
体の向きを定期的に変えることで、同じ個所に長時間圧がかからないようにするということです。
体を横に向ける時には、体位変換器やクッションなどを使用して横向きの姿勢を保持させます。
ただ、2~4時間おきに体位変換させることが推奨されているので、この通りに体位変換させようとすると家族への負担は大きくなります。
そのような負担をなくす方法として、自動体位変換機能付きのエアマットというものがあるので、介助負担を軽減したい時にはそちらが有効です。
ポジショニングを行う
ポジショニングとは、姿勢を変えたり保ったりすることが難しい方の姿勢管理を見直し、安定した姿勢をとれるようにすることです。
体位変換との違いがわかりにくいですが、体位変換は体の向きを変えるということに対し、ポジショニングは体の向きを変えなくても安定した姿勢をとれるように体位変換器やクッションなどを使用し、楽な姿勢をとれるようにするということです。

ポジショニングをして楽な姿勢、安定した姿勢をとれるようにすることで、床ずれや拘縮など二次的な問題を改善・維持・予防する効果が期待できます。
【ずれ・摩擦】が原因の床ずれ対策
ずれ・摩擦が原因の床ずれは傷がV字のようになっていたりして丸くない形状になっているのが特徴です。
電動ベッドの背上げをする時やベッドから車椅子へ移乗させようとする時などに体がずれたり摩擦が多くなることが原因なので、この場合は体を動かす際にずれ・摩擦に注意しながら介助することが大切です。
ずれや摩擦を少なくする方法としては以下のようなことが挙げられます。
介助方法を適切に行う
ずれによる床ずれの原因としてよくあるのが、電動ベッドの背上げ時にかかるずれです。
電動ベッドの背上げをすると、体全体が足元側へずれやすく窮屈な体勢になりずれ力も大きくなります。
足上げも行える電動ベッドであれば、背上げよりも先に足上げをすることがずれを抑えるポイントです。
先に足上げをすることで体全体が足元側へずれることを防げるので、ずれを軽減させることができます。
また、仰向けの状態からベッドに腰掛ける状態までの動作で、体を起こしてからお尻を中心に90度回転させるような介助をしていませんか?
このような介助もずれ力が大きくなる原因です。
適切な介助方法で介助すれば、ずれ力を軽減するだけでなく介助量を減らすこともできます。
スライディングシートを使う
電動ベッドで背上げをして体全体が足元側へずれてしまった時に、無理やり正しい位置まで戻していませんか?
仰向けの状態のまま体を頭側へずらす動きは摩擦がかなり大きくなり、力任せにやろうとしても大変です。
そんな時に役立つのがスライディングシートです。
スライディングシートとは、非常に滑りやすい素材でできているもので、体を移動・移乗させる為のシートです。
スライディングシートをベッドと体の間にを入れてから、体をずらすようにすると少ない力で楽に動かすことができますし、ずれ力もほとんどなく皮膚へ負担が掛かりません。
スライディングシートについては、下記の記事をぜひ参考にしてみてください。

シーティング
シーティングとは、椅子や車椅子等に快適に座る為の支援のことです。
筋力の低下であったり体幹が弱ってくると座っていても姿勢が崩れやすくなります。
車椅子を使用されている方のなかでも特に多く見られるのが滑り座り(仙骨座り)です。
車椅子に座ってしばらくは姿勢が安定していても、デイサービス利用など長時間車椅子に座っていると段々とお尻が前に滑ってきて上半身が後ろへ倒れてしまうような座り方のことです。
お尻の位置が前に動いてしまうということは、お尻にずれ力や摩擦が生じているということになります。
座っている姿勢が崩れることによって、床ずれをつくってしまうことにも繋がるのです。
長時間座っていてお尻が痛くなるのであれば、除圧効果の高い車椅子クッションを使用するのが良いでしょう。
また、長時間座っていてもお尻はあまり痛くはならないが滑り座りにはなりやすいというのであれば、座面の前方が厚く後方が薄い形をしているアンカータイプと呼ばれる車椅子クッションを使用するだけで改善されたりします。
その他にも、横に倒れてしまいやすい方は、体の横に体位変換器やクッションなどを挟んで姿勢を保つという方法もあります。
【皮膚湿潤】が原因の床ずれ対策
皮膚湿潤が原因の床ずれの多くは、
- おむつで排泄をしたまま長時間放置している
- 汗をかいても拭かずに過ごしている
の2つになります。
おむつに排泄をしたまま放置すると皮膚がふやけて弱くなってしまうので、定期的なおむつ交換をすることで床ずれを予防することができます。
また、汗をかきやすい方の対処法としては室温を調整する他、風通しのいいパジャマを選ぶ、体位変換器やクッションを使用しているのであれば通気性の良いものを選ぶなどになります。
【栄養不足】が原因の床ずれ対策
当たり前ですが、栄養不足に対しては栄養をとることが一番の対策になります。
1日3回食事を摂っていても、同じものばかり食べていたり、量が少なかったりすると、必要な栄養素が不足してしまうことがあります。
調理方法を工夫する
食べにくい、飲み込みにくいといったことがあるようなら下記のような方法で調理を工夫するといいでしょう。
- 噛む力が弱い場合は、やわらかく調理したり食べやすい大きさに切る
- 飲み込む時にむせやすい場合は、とろみをつけてむせにくくする
調理方法を変えると食事量も増えるかもしれません。
食欲を増進させる工夫をする
食欲がない場合は、下記のような方法で食欲を増進させる工夫も加えてみるといいでしょう。
- 好きなものをメニューに加える
- 家族と一緒に楽しく食べるようにする
- 食べ物が見える姿勢にする
- 盛り付けをきれいにしたり、香りづけをする
栄養補助食品を活用する
1日3回の食事だけでは栄養が足りないという方は、高たんぱく・高エネルギーの栄養補助食品を活用するといいでしょう。
まとめ
床ずれが発生している原因がどれになるのかを知ることは、床ずれを治すにあたって重要です。
もちろん、複数の原因が重なっていることもあるので、しっかりと見極めそれぞれの原因に応じた対処をしていくことが床ずれを早く治す近道になります。


コメント